プリンス ~そして現在~
最前線への返り咲き
インターネット中心であったプリンスの音楽活動は、次第に通常の形態へシフトされていきました。かといって、古巣ワーナーのような、自身を束縛するレーベルと契約することも潔しとしませんでした。
アルバム「EMANCIPATION」以降、メジャーレーベルとアルバム単位で配給の契約を結ぶという手法を用いていたプリンスでしたが、それを引き続き活用したのです。プリンスはアルバムを出す度に配給先を選ぶことによって、メジャー供給の宣伝力を活用しつつも、自らの自由を確保することに成功しました。
コロンビアからリリースされたアルバム「MUSICOLOGY」は、店頭販売以外に、コンサートのチケットにも付属されるという奇抜な戦略で売り出されます(余談ですが、チケット購入分が加算されたため、久しぶりにビルボードを賑わすことになりました)。
また、同ライブを引っさげた全米ツアーも大盛況で、マドンナなどを差し置いて、同年最も稼いだアーティストとして多くの人に記憶されました。かつてのプリンスであれば当然の話なのですが、(一時的とはいえ)シーンの一線を退いたあとの華々しい復帰でした。
時を同じくして、ロックの殿堂入りを果たしたり、立て続けに各アウォードを受賞したり、全盛期の活躍ぶりを彷彿とさせる快進撃が続きます。特に米国内での再評価が目覚ましいものがありました。 ディアンジェロ、アウトキャスト、アリシア・キーズ、Ne-Yo、Maroon5、ビヨンセなど、新進気鋭の若手人気ミュージシャンがこぞってプリンスからの影響を公言したのも、再評価の熱を後押しした要因になったと推測されます。
新しいカタチ、信念の証明
「MUSICOLOGY」のときは、ライブチケットとCDを抱き合わせで販売するという試みをしたプリンスでしたが、その意図がハッキリする「事件」が起きました。
「Mail」紙の広告
プリンスは、英新聞「Mail」紙に添付して、最新アルバム「PLANET EARTH」を無料配布したのです。
最新アルバムを、しかもCDという形態で配布するということは前代未聞の行為でした。
賛否両論ありましたが、音楽業界の関係者は概ね強い遺憾を示しました。特に猛烈に反発したのはイギリスでの配給元であるソニーBMG。何しろ他人事ではなく、直撃です。結果、イギリスではアルバム自体の発売が中止されました。
小売業から配給会社まで、あらゆる音楽業界関係者からのバッシングを受けるプリンス。
こんなことをしたら音楽家としての立場が危うくなるのでは?と危惧もされましたが、プリンスは違いました。彼はイギリスにおいて21夜におよぶコンサートを開催したのです。
をかたどった360度方位型のドームステージは大規模なものでした。
この象徴的な一連のキモはこうです。CD全体の売り上げが低迷し、デジタルコピーが横行する現代社会において、CDという形態のみに固執することは最善の策ではありません。ましてアーティストはその多くの利益を配給会社に搾取(とプリンスは呼んだ)されてしまいます。そこで、プリンスはCDを宣伝媒体としてのみ利用し、コンサートで利益を得ました。これはまさに、 長らくアーティストの権利を主張し続けたプリンスの最たるレジスタンス活動と言えるでしょう。
to be continued...
2008年には50歳を迎えるプリンス。
その活動は衰えるどころか、若返っているようにエネルギッシュです。
そう、プリンスの伝説はまだ終わりません。
参考文献:
「戦略の貴公子」blues interactions, inc. ISBN 978-4-86020-257-6
一部、Wikipediaより